【連載】『子連れソーシャルワーク留学 IN カナダVOL4-6』二木泉【ソーシャルワークタイムズ掲載記事】

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弊法人メールマガジン「ソーシャルワークタイムズ」にて連載中の二木泉さんによる「子連れソーシャルワーク留学 in カナダ」の過去記事を掲載いたします。二木さんは、日本財団国際フェローシップの支援を受け、現在はお子さん2人を連れてカナダのトロント大学大学院にソーシャワークを学ぶため留学中。カナダの文化や社会福祉サービスの現状、そして大学院での学びの共有をしていただいています。最新号を読みたい方はぜひ、ソーシャルワークタイムズ購読をお願いします。

VOL1-3はこちらから!

・「子連れソーシャルワーク留学 in カナダ ~小学校で午前中におやつ?!~」

私は現在、子どもと一緒にカナダのトロントに留学しています。今回から数回に渡り、子ども連れでなければなかなか見られない学校や学童、児童福祉の様子をお伝えしたいと思います。

我が家の子どもたちは、日本では小5と小2。カナダでは生まれた年で学年を分けるため、早生まれの娘は変わらず小5に、息子は一つ繰り上がって小3に編入することになりました。

学校は日本と同じように住んでいる場所によって決まります。明確なルールはないものの、大体10歳くらいになるまでは送り迎えが必要です。トロント市内の小中学校はほとんど歩いて通える範囲にあるので、洋画で見るような車やスクールバスでの送迎は必要ありません(特別な教育や支援が必要な場合などはスクールバスで通学することもあります)。
ペーパードライバーの私はこれにはホッとしました。トロントはカナダの一般的なイメージとは違い(?)都会でいつも道が混んでいる上、皆さん運転がとても荒っぽいのです。

カナダの学校生活は年中さんから始まります。最初の2年間はキンダーガーテン(幼稚園のようなもので小学校に付属しています)。小学校5年、中学3年、高校4年の12年生までが義務教育です。卒業式は高校のみで、それぞれの学校の入学式や卒業式はありません。学校も場所によって5年生までだったり、我が家の子どもたちの通う学校のように8年生まであるところもあります。ちなみにキンダーガーテンを含めてすべての学年で毎日、朝8時45分から15時20分までとなっています。

びっくりしたことは学校で午前中に「おやつ」が出ること。カナダでは健康的な食生活を推し進めようとしており、果物や野菜、ビスケットなど比較的ヘルシーな「スナック」が、午前中に配られるのです。

朝が早い日本の学校、我が家の子どもたちは朝ご飯をしっかり食べていても給食までお腹がもたず、腹ぺこになってしまうため、カナダのスナックは(食べ過ぎなければ)良い仕組みだと思いました。このスナックプログラムは、まだ全ての学校に導入されているわけではないようです。子どもの学校は移民の多い地域にあり、トロント市内のモデルスクールとなっているために実施されているようです。

この時以外にも、学校には炭酸飲料とガム以外なら何を持って来てもよく、いつでも好きな時に(授業中でも!)食べることができます。私の通う大学院でも同級生が授業中に、サンドイッチやお菓子、ヨーグルトや野菜などを食べています。授業中に物を食べることは先生に対して失礼にならないんだそうです。逆に、授業中に寝ることはとても失礼なことなんだとか。日本の大学とはかなり様子が違いますね。

さて、子どもたちの学校のスナック代は、一人につき月10ドルの「寄付のお願い」が来ます。もちろん寄付ですので、それ以上の金額を出しても良いですし、払わなくても良いです。寄付はレシートを取っておくと、税金の控除に使用することができます。任意の寄付として集めることで、払うことのできない家庭の子どもも食べることができるようになっているのです。

この学校には他にも2ドルでお昼が食べられるランチプログラムや朝食プログラムもあります。朝食プログラムは、申し込みをした希望者に学校が始まる前に簡単な朝食を提供するものです。トロントは他の大都市と同様、格差の広がり、貧困の問題を抱えており、様々な事情で家で朝ご飯を食べられない子どもが存在します。これに対して市や教育委員会、学校は、それぞれ試行錯誤で色々な取り組みを始めているのです。

我が家の子どもたちは普段、お昼はお弁当を持参しています(日本式なのですが、生徒が多国籍なので気にならないらしい)。でも、ランチプログラムがあることは、私にとってセーフティネットの一つになっています。単身で来ていることもあり、もし私に何かあり準備できなくても、お昼はちゃんと食べられるという安心感につながっているのです。食事や給食は、生活に密着した福祉の一部なのだと改めて感じています。

次回は、公平・公正を重視するカナダの教育システムについてお伝えします。

 

 
ソーシャルワーク・タイムズ vol56 2015.2.8より転載
 
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・「子連れソーシャルワーク留学 in カナダ -公平・公正を重視するカナダの教育-」

現在、子どもたち2人は地域の小学校に通っています。カナダの新学期は9月から。転入手続きをした際「何か持っていくものは…?」と聞くと「何も持って来なくて大丈夫。体だけで来て。」と言われました。嘘だと思ったら、ほぼ本当でした(笑)。

カナダの小学校は、鉛筆やノート、絵の具等の学用品は基本的に全て学校側で準備してくれます。
各自リュックサックを使用しているので、ランドセルはもちろんありません。6ヶ月で唯一購入した物は、YA◯HAのリコーダー3ドルと楽譜2ドル、ロッカーの鍵くらいです。教育が誰でも公平に受けられるように、という考えからです。
日本で入学前に文房具や指定の体操服や上履きなど色々なものをそろえたのに加え、ドリルや絵の具、鍵盤ハーモニカ代など高額な集金があったことを思い出しました…

前回、午前中のおやつ代が「寄付」として任意で集められるとお伝えしました。小学校で寄付と言えば、これ以外に月に1回程度ベークセール(食品バザー)があります。親が協力してポップコーンやカップケーキなどを50セントから1ドルで売るのです。子どもたちがお金を持参し、好きなものを購入します。そこで集まった寄付を学校運営に充てています。
日本でも子どもの貧困が問題になっている今、保護者が申し込みをしないと受けられない就学援助費という一律の支援制度だけでなく、自治体や学校ごとの工夫で様々な方法が考えられるのではないかと感じました。

なお、学校の手続き関係は担任の先生ではなく事務員の方が担当しています。担任の先生は基本的にはクラスでの指導に専念できるようになっています。
そして1クラスの平均は20人以下。カナダ政府が1クラスの人数をなるべく20人以下に、というガイドラインを出しており、オンタリオ州では、1クラス23人以下と決められています(実際に90%以上が20人以下とのこと)。ちなみに、今は教科書を使用しない、実験やグループワークなど参加型の授業が主流になっているそう。参加型授業を行う場合一人の教員がみられる人数は20人くらいが限度かもしれません。

ちなみに意外かもしれませんが、制服(ユニフォーム)があります。といっても、学校のロゴが入ったポロシャツやパーカーなのですが(笑)。これは学校単位で方針が異なるそうです。でも、そこまで高額でなく、上半身のみ、ユニセックス、アイロンがけ必要なしなので(←これ重要)とても便利です。まあ、着ていなくても注意されることもないようですが。

全員加入のPTAのようなものはなく、学校運営や遠足、クラブ活動のお手伝いなど募集に応じて、先生と直接やり取りしてお手伝いに行くことがあります。このように、働く親にとっても(ほとんどの親が働いています)プレッシャーの少ない学校生活です。

さて我が家の子どもたちは、英語はほぼゼロの状態で学校に通い始めました。
「トイレはどこですか?」などと書いてある緊急カードを、初日に持たせていたものの、かなり心配していました…。

ソーシャルワーク・タイムズ  vol57 2015.2.15より転載

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・「子連れソーシャルワーク留学 in カナダカナダ=他民族国家の移民受け入れ態勢- 」

私と一緒にカナダに来ている我が家の子どもたち(小5、小2)は、英語はほぼゼロの状態で学校に通い始めました。最初はもちろん戸惑いの連続でしたが…、結論から言ってしまうと、あまり心配することはなかったようです。

実は、トロント市のほぼ全ての学校にはESL(※English as a second language)という、英語を母語としない子どもたちのためのクラスがあります。一日の半分くらいをそのクラスで過ごしています。すごろくやゲームを使って英語を勉強したり、本を読んだり、市内の色々なところに遠足に出かけて文化的体験をしています。

なぜこのように外国人に優しい環境なのでしょうか。それは国の政策として、移民や外国人を積極的に受け入れているためです。

カナダの人口は3,500万人ほど。高齢化に伴う労働力人口の減少を懸念して、様々なスキルを持つ移民を積極的に受け入れています。例えば看護師、介護士や医療系、住み込みのベビーシッターなど。その数なんと年間約25万人!また難民(とその申請者)を多く受け入れている国でもあります。カナダは、世界の難民の10人に1人、毎年約2万数千人の難民とその家族(申請者含む)を受け入れているそうです。(ちなみに日本では、一昨年3,777人の申請に対し6人を難民認定し、151人を人道的配慮として在留資格を与えたんだとか。)

これらの背景があり、移民や難民、外国人に対し、英語やキャリア教育を無料で行うプログラムが沢山あります。地域の学校やコミュニティセンターなどで、英会話教室や就労につなげるための講座や、個人サポートが行われています。移民や難民を受け入れるだけではなく、語学を身につけ、また教育を積んでもらい、カナダに貢献してもらう人材を育成しようという国の姿勢があります。

日本でも外国からの家事労働者や研修生の受け入れを拡大することが決まっています。しかし社会として受け入れ体制は整っているでしょうか。国として積極的に受け入れを進めるからには、本人の負担や、受け入れ先になっている会社や組織だけに負担が集中することがあってはなりません。そして受け入れた後に、差別や不利益が生じることのないように努めなければならないのではないでしょうか。

ちなみに、カナダは英語とフランス語の二カ国語が公用語。小学校4年生くらいからフランス語を勉強します(すべてフランス語で教育する公立の学校もあります。ちなみにカトリックの公立学校もあります)。そのため5年生の娘は今、英語を学びながら、フランス語を学習し、土曜日には日本の補習校に通っているという状態です。

さて、日本での共働き家庭やシングルペアレントと同様、単身での子連れ留学で最も重要なものは、子どもたちが昼間安心して過ごすことの出来る場所(保育園や学童)を確保することだと思います。
学校の手続きが終わり、次は学童の申し込み!だったのですが…。

(つづく)

ソーシャルワーク・タイムズ  vol58 2015.2.22

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名前:二木泉(にきいずみ)
ライタープロフィール:
国際基督教大学卒業後、民間企業にて勤務。大学院修士課程修了後、介護福祉士として
認知症専門デイサービス、訪問介護、女性を支援するNPOの事務局、専門学校講師などに従事。
介護職や支援者への支えが必要なことを感じ、日本財団国際フェローシップの支援を受け、
現在は子ども2人を連れてカナダのトロント大学大学院にソーシャワークを学ぶため留学中。
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