緊急対談(CSW×MSW)「コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)の可能性~地域包括ケアシステム構築にむけて~」

メルマガ「ソーシャルワークタイムズ vol 27」より抜粋です。

2014.6月 都内某所にて。 

 

横山:「今日は、地域包括支援センターで社会福祉士として勤務されている田村さんにお話を伺います。

田村さんとは5年前に私が都内の病院に勤務していたときに知り合ってからの縁ですよね。

実際のケースを通じて何度も一緒にお仕事をさせていただきました

今日もお会いするのは久しぶりです。改めまして田村さん、今日はよろしくお願い致します。」

 

田村:「よろしくお願いいたします。これ、メルマガで配信されるですよね?

メルマガ読者のみなさん、はじめまして、田村です。職場に許可取ってないので下の名前はシークレットです(笑)」

 

横山:「シークレット(笑)了解しました。今現在メルマガを登録頂いている方が500人くらいなんですよ。

もしかしたら、ご勤務先の方にも読んで頂いているかもしれませんね。」

 

田村:「500!緊張しますね…。勤務先の上司には事後報告しときます(笑)嫁にも登録しておけって言っておきました!あ、写真もNGで!!」

 

横山:「(笑)ありがとうございます。奥さんによろしくお伝え下さい!写真NG…、残念ですが、芸能人で言うと東幹久の濃さを7割くらいに薄めた感じですかね…(笑)

 

田村:「それ、褒めてるんですか…(笑)」

 

横山:「ええと、では、ということで!本日は田村さんから”コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)の可能性~地域包括ケアシステム構築にむけて~”というタイトルでお話いただきます。」

 

田村:「サラリとながしたね…(笑)CSW…ね。NHKのサイレントプア*1、先週のNHKプロフェッショナル*2といい、この仕事が注目されるのは嬉しい限りですね。取り上げられていた勝部さんは、大阪の豊中市社会福祉協議会に勤務されているんですけど、私たち地域包括支援センターの職員も地域を舞台にソーシャルワーク実践をしている、まさにコミュニティソーシャルワーカーなんですよ!

 

横山:「しょっぱなから、熱いですね…。暑苦し…、あ、失礼しました。まずはじめに簡単に自己紹介をいただいてもいいですか?」

 

田村:「そうでしたね、自己紹介…。ええと、社会福祉系の大学を卒業してまして、最初はデイサービスの相談員として4年務めました。その後、地域包括支援センターに転職して6年目になります。」

 

横山:「10年選手、大先輩ですね。あ、読者の方の中には”地域包括支援センター”という名称を聞くのが初めての方もいると思うので、簡単にご説明いただいてもいいですか?」

 

田村:「そうでしたね。地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正で制定された介護保険法で、各区市町村に設置が義務づけられた地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関です。簡単に言うと、地域住民、高齢者の方の介護等に関するよろず相談窓口みたいなイメージですね。」

 

横山:「各中学校区に一カ所設置されてるんですよね?」

 

田村:「そうです。センターには、保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士が置かれ、三職種の専門性を活かし、連携しながら業務にあたっています。

 

横山:「具体的にはどんな役割を地域で担っているのですか?」

 

田村:「大きく5つの役割を担っています。図とかあるといいんだけど…、これ、メルマガでは箇条書きかなんかにしてもらえますか?」

 

横山:「はい、了解です。」

 

田村:「とりあえず、以下5つの役割があります。

 【総合相談】

生活、介護、健康などについての全般的相談支援

【権利擁護事業】

虐待、消費生活問題、成年後見制度利用への支援

【介護予防事業】

介護状態にならないよう介護予防の普及啓発

【介護予防給付】

介護保険要支援1、2の認定を受けた方のケアプラン作成

【包括的・継続的ケアマネジメント】

・ケアマネジャーへの情報提供、困難事例の後方支援

・地域で円滑なケアマネジメントが行えるよう、様々な関係機関

(医療機関、インフォーマルサービス、住民組織) とのネットワーク構築

 

横山:「なんか、本当に業務範囲が広いですね…。

田村さんのご勤務先には社会福祉士は田村さんお一人ですか?」

 

田村:「そうなんですよ。社会福祉士は私1人だけです。保健師や主任ケアマネージャー等の他職種ももちろんいますが。

まあ、マンパワー的に足りてないのはどこの地域包括支援センターも同じ感じなんですよね」

 

横山:「ご苦労お察しします。日々の業務での、具体的な対応事例等、一部改変頂いて、差し支えない範囲でお聞かせ願いますか?」

 

田村:「そうですね。先日、入院中の患者さんの奥さん妻から相談がありました。入院中の旦那さんが骨折により入院中で、リハビリ続けているが、まだ十分に歩ける状態ではない。病院からは転院し、リハビリ受けること勧められたんだけれども、本人は頑として在宅に戻ることを希望している…。でも、奥さんも高齢で…」

 

横山:「奥さんもご心配な訳ですね」

 

田村:「そうなんです。高齢夫婦2人暮らしなので介護が不安だということで病院のソーシャルワーカーに相談したところ、地域包括支援センターに相談したほうがいいと言われで、相談に奥さんがいらっしゃいました。病院のMSWに私の方から連絡を取り、病院内でご本人のリハビリの様子等を奥さんと一緒にみさせてもらいながら、退院後、安全に自宅で生活できるように、お家のお風呂やトイレに手すりをつけたり、自宅でも引き続きリハビリが継続できるように、訪問リハビリのサービスの手配等をし、無事ご自宅にご退院になりました。退院後、お元気に生活されています」

 

横山:「私も病院でソーシャルワーカーとして働いていますが、地域包括支援センターの職員の方々には本当に助けていただいています。

 

田村:「私たちも、病院の窓口としてソーシャルワーカーさんがいてくれて助かっています。直接病棟の看護師さんに連絡するのも気が引けますし、何より福祉の視点から患者さん家族の生活を考えることができますしね。もちろん、そういった看護師さんもたくさんいますけど」

 

横山:「(笑)」

 

田村:「それから、他にもこんなケースがありました。」

 

横山:「ええ。」

 

田村:「民生委員より相談があったケースです。高齢の独居の女性で、その方の自宅から異臭がする、と。ご本人の身なりも汚く、目もうつろ。以前はそんなことはなかったからおかしいと。認知症かもしれないので心配なので見に行ってほしい、ということでした」

 

横山:「認知症の方のケース。そういえば、先日NHKで、認知症の行方不明者1万人*3というニュースが話題になりましたよね

 

田村:「そうでしたね。本当に、ここ数年で、認知症の方は増えたな、という印象です。まあ高齢社会ですから当然といえば当然なんですが。その女性のケースでは、ご近所に話を聞いたところ、ご結婚歴なく、きょうだいと一緒に暮らしていたが、数年前に亡くなり、気にかけてくれるお身内がいないこともわかりました。」

 

横山:「血縁や親族のネットワークがない方だったのですね」

 

田村:「そうなんです。ですが、民生委員*4の方がきちんとその女性の方の変化を”おかしい”と感じて、地域包括支援センターに連絡をくださったので、その女性の方と私たちがきちんと繋がることができました。」

 

横山:「民生委員の方も、大切な地域の社会資源なのですね」

 

田村:「本当にそうです。これは専門用語でアウトリーチ*5というのですが、当事者の方々が諸々の問題でご自身たちだけで助けを、SOSを発することができない方たちが、地域にはどうしても一定数いらっしゃいます。介護疲れによる無理心中などのニュースを目にするたび、やり切れない思いでいっぱいになります…。

 

横山:「そうですよね…。本当に」

 

田村:「地域包括支援センターとしても、センターに相談に来ることができない方たちに対して、きちんと足を運び、必要なサポートに繋げていくということをやらなければいけないのですが、マンパワー的に、地域の全てを知り尽くす、ということは最早不可能です」

 

横山:「だからこそ、民生委員の方含め、地域住民の方の力や見守りの目が必要になってくる、と」

 

田村:「そうです。まさに、この女性のケースも、民生委員の方が、女性の異変に気づいたからこそ、私たちが足を運ぶことができたのです。結果、認知症の診断で、専門の医療機関で内服を出してもらいながら、介護保険のサービスを使い、ご自宅での生活を継続なさっています」

 

横山:「まさに、さきほどおっしゃっていただいた地域包括支援センターの役割のひとつである”地域で円滑なケアマネジメントが行えるよう、様々な関係機関(医療機関、行政、インフォーマ ルサービス、住民組織) とのネットワーク構築”ですね」

 

田村:「そうです。こればかりは一朝一夕でいかないのですが、自治会長さんや地域で力をもっている方としっかりとネットワークの組み、それをきちんと強化していく、というのも、私たち地域包括支援センターで働くコミュニティソーシャルワーカーに求められている大きな役割だと考えています。

 

横山:「貴重なお話をありがとうございます。それではつづいて、この仕事に求められていること、そして、魅力、やりがいなどについて、お話いただけますか?あ、文字数的にいっぱい?では、来週、後編ということでいきましょう。」

 

田村:「了解です!では、みなさん、また次号で!(笑)

 

横山:「(笑)また次号!」

 

〜後編はこちらをクリック〜

 

*1 NHKサイレントプア

深田恭子主演のコミュニティソーシャルワーカーを主人公にしたドラマ

 

*2 NHKプロフェッショナル

サイレントプアの主人公里見のモデルとなった豊中市社会福祉協議会の勝部麗子氏が登場し話題となった。

 

*3 認知症の行方不明者1万人

今年、NHKが行った調査によって明らかになった数字。徘徊認知症高齢者の行方不明者等も大きな話題となった。

 

*4 民生委員

民生委員法(昭和23年法律第198号)に規定されている市町村の区域に配置されている民間の奉仕者。

 

*5 アウトリーチ

福祉などの分野における地域社会への奉仕活動、公共機関の現場出張サービスの意。

 

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