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【子どもの権利を守る 予防的ケアへの挑戦  】第3回 Social Action School 【イベントレポート】

04 10月 17
SCAスタッフ
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『子どもの権利を守る 予防的ケアへの挑戦   』

講師:NPO法人PIECES共同創設者 事務局長  斎典道 氏(さい よしみち)

 

【子どもの教育と福祉の権利の統一的保障を目指す】

 

こんにちは!SCA1期生の武井です。

8月27日に開催されたSocial Change Agent養成プログラム、Social Action School第3回の講義のレポートをさせて頂きます。講師であるNPO法人PIECESの事務局長を務める斎典道さんは、「子どもの教育と福祉の権利の統一的保障」を人生をかけて取り組むテーマとして掲げて、ソーシャルアクションを起こされ、「福祉なくして教育はなく、教育のない福祉はない(小川利夫)」という認識をもち、複数の支援団体に所属しながら、胎児期、乳児期、学童期や青年期の子どもの孤立を防ぐ取り組みをされています。

自らを団体の「黒子」と表現する斎さんの行動には、組織のアクションを陰で支えるというソーシャルワークの新たな側面を見ることが出来ました。

私武井自身も、所属するNPOで子どもの学習支援と夕ご飯の提供、更には家庭での生き辛さを抱えた人が一時的に宿泊できる場所の提供をまとめた小規模な多機能施設を立ち上げ中です! この地域でやるからには、生活圏内の人の力を集めたい。でもどうしたらよいのか悩んでいた中で、斎さんのプロジェクトの「価値を共有する」ことの重要さが脳髄に響きました。以下、講義内容になります。


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1.NPO立ち上げに至るまで



<斎さんのストーリー>

大学在学中には、国内外の社会的養護、地域子育て支援の現場でフィールドワークをされていました。保育士の養成課程で実習として児童養護施設に訪れた際に、子どもの試し行動などに衝撃を覚え、「子どもたちが児童擁護施設へ入所する前に、もっと未然に子ども達に対して出来ることはないのか?」問題意識を持ちます。さらに、国内では社会福祉士の予防的な働き方が他国に比して発達していないと考えた斎さんは大学院在籍中、福祉先進国の北欧はデンマークへの留学を決意。

デンマークでは、施設養護か家庭的擁護の議論から「予防的ケア」の議論へ移行していることを実感されます。また、SWの働き方として、当事者が権利を行使できるように働くことを意識するようになり、日本では、権利を語る際に権利擁護として「守るもの」という考えが一般的ですが、「権利はそこにあるものではなく、行使するもの」という認識を持ったそうです。帰国後も、自分の意思で選んできた、人とは少し違う道である、「積極的逸脱」を繰り返してきた結果、NPO法人PIECESの立ち上げへの参画に至ります。



2.NPO法人PIECESとは

NPO法人として活動するPIECESの概要は以下の通りです。

子ども達を取り巻く、貧困、虐待、不登校や中退などの現状は、背景として「子どもの孤立」があると考え、それらを予防するための支援を展開しています! 
参照:http://www.pieces.tokyo/

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◆ビジョン:どんな子どもでも尊厳をもって豊かに生きられる社会

◆ミッション:子どもにとって信頼できる他者を増やし、社会の受容性を高めることで、子どもが孤立しない仕組みをつくる



◆事業内容

・孤立調査事業: 孤立している子ども達がどのくらいいるのか調査プロジェクトを行う

・CYW育成事業: 行政、地域と連携し、孤立したこども達に寄り添い、支援につなげる伴走者の育成

・会員コミュニティ事業: 孤立したこども達を支える多様な地域、企業の人などを集め、子どもを支えるコミュニティを生み出す。

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不登校や虐待などの諸問題の背景には「子どもの孤立」が存在しています。子ども達の孤立が起こる発達段階としては、「乳児期」「青年期」が多く、この段階に支援を行うことがポイントとなります。



子ども達の孤立につながる諸問題

乳児期

青年期

・虐待

・親の精神疾患

・親を亡くす

・若年妊娠

・親が子どもと過ごす時間が持てない

・虐待

・親の精神疾患

・いじめ、中退、不登校

・本人の若年妊娠

・貧困、就労の困難さ


そこに予防的な支援を行うためには、妊娠から乳児期、青年期の子どもにフォーカスして介入することが重要になります。しかし、現在、子どもたちを支援する選択肢としては、公的に支えるのか(公助)、家族で支えるのか(自助)の2択になります。



公的支援を受けるためには、当事者が公的機関に申請することが前提になるため、さまざまな理由で申請が困難である方にとって、支援を受けるハードルは高くなります。また公的支援も、貧困や虐待、障害などで支援分野や、当事者の発達段階に対して縦割り的でサービスが提供されており、対象の子どもや世帯にとって包括的な支援を受けることが難しいという課題があります。



このような状況下にある対象の子どもに対してPIECESは、「特定の信頼できる大人との出会いの提供」を行い、予防的な関わりを行います。具体的には子ども達と個別的な関わりができるコミュニティユースワーカー(以下、CYW)をPIECESが実施する研修によって育成します。CYWは対象の子どもとの個別的な関わりを通して、子ども達が抱えている問題をアセスメントしたり、子どもの興味や関心の分野を引き出したりして、支援機関や活動の機会につなげる役割を担っています。

※参考 http://www.pieces.tokyo/cyw/


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3.非専門家を活かすために

CYWは個別的に子どもたちと関わるため、PIECESが取り組むビジョンを達成する上で非常に重要な役割を持ちます。

対象の子どもたちの奥底にあるニーズや願いをキャッチし、支援を行なったり、関連機関に繋げたりする役割をもつため、経験値や専門性が必要だと思われますが、現在では様々なバックグラウンドを持つ方々がCYWとして16名活動しており、今までのプロジェクトでは230名の方を支援した実績があります。

ここでは、ビジョンに向けて一緒に歩んでいく協力者の方をPIECESがどのように巻き込んでいるのかについてお伝えします。

 

(1)価値観の共有

PIECESビジョンの実現に向けて、チームとしてどのような価値観を共有したいと考えているかをまず第一に伝えます。CYWは単なる子どもたちのサポート要員ではなく、ゆっくりと信頼関係をつくり、子どもたちの興味関心に寄り添い、可能性を引き出すこと。そのためにPIECESとして大切にすることは何かを丁寧に伝えていきます。

 

(2)実践と理論のインタラクティブな研修

CYWが実際に活動する中で体験したケースをゼミ形式で共有し、実際に経験したことの整理を行います。知識の習得のための座学が実施されるため、CYWは専門性と経験値を交互に習得し、常に実学として学んでいきます。

 

(3)CYWへの支援

専門職の方たちが丁寧にこどもたちを見立てて、その子にあうとおもわれるCYWを担当につけます。上記のように研修が定期的に行われるため、専門職や他のCYWからフィードバックを受けられるので、こどもたちへの関わりの質の向上、支援者の孤立の防止、結果、CYWたちがバーンアウトすることを防ぐことにもつながります。

 

※参考 http://www.pieces.tokyo/cyw/

 

このようなCYWを支える体制を整えることで、多様なバックグラウンドをもつ大人の方々をこどもたちの伴走者として育成する事ができます。福祉分野で地域資源を活かすためには、単なるボランティアとしてではなく、同じビジョンに向かう仲間として迎え入れ、行動の土台となる価値観を共有し合うことが重要だと感じました。


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4.多分野で働く独立型ソーシャルワーカー

 

斎さんは現在、

・PIECESの理事として組織マネジメント

・「スクールソーシャルワーカー(以下、SSW)」として教育の現場で

・「にんしんSOS東京」思いがけない妊娠に悩む女性に対する相談員として

 

3つの団体に所属し、独自のソーシャルワークを実践されています。他団体の業務やマネジメントを兼業することによって、様々な視点を得る事ができるとお話しされていました。

 

斎さんが活動される団体を発達段階に照らし合わせると以下のようになります。このように、隣り合う領域で支援を行う事で、メゾ、マクロレベルのアセスメントの手助けになります。それぞれの職場で子どもの異なる発達段階を横断的に支援することで、対象者の発達段階に合わせた支援や、次の発達段階に合わせた予防的なサポートシステムを作るためのアセスメントにも応用することが出来ます。

 




子どもの孤立を防ぐ予防的な支援として、「にんしんSOS東京」での支援があります。子どもが生まれる前や生まれた直後から、子どもの育つ環境をサポートできるため、PIECESで行う子どもや若者支援につながるサポートシステムを構築する事が出来ます。

 

SSWの現場では、構造上の問題として、当事者→担任→学校の管理職→教育委員会→SSWへ要請があって初めて介入できるため(地域によって異なる)、斎さんが目指す予防的な支援とは距離感がありますが、学校の先生や管理職サイドの考え方や文化を知り、アセスメントのための想像力を養うことが出来たそうです。


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5.「予防」のために取り組むソーシャルアクションとしてのネットワークづくり

 

(1)マルチセクターでの勉強会を開催

PIECESが窓口となり、「子どもの孤立を防ぐ」等のテーマで様々な組織、職能の方を対象にした勉強会を開催しています。対象は福祉の専門職に限らず、学校の先生などの子どもに日頃から関わりを持つ方などを対象とし、「予防的な支援」を行う価値の共有や連携の方法などを話し合い、効果的なネットワークを意図的かつ自然に作る工夫をしています。

 

(2)関係者間のエコマップの作成

子どもの孤立を防ぐための予防的なネットワークを作るためには、支援者同士の連携を強めていくことが重要になります。PIECESでは対象の子どもの孤立を防ぐために、こどもを取り巻く環境のなかにいる個人同士の関係性を可視化するエコマップを作成しているそうです。エコマップを作成することにより、対象となるこどもたちに繋がるためには、先ず誰にアプローチをすればよいのかなどを明確にすることができます。

さまざまな組織・職能の方とネットワークをつくり、協働していく際にもビジョンを共有することが重要です。そのために、上記の勉強会などで、サインズオブ・セイフティアプローチを用いて、それぞれの組織がもつ独自の強みを発揮するためにはどのように行動をすればよいのかなどを話し合ったりしているとのことでした。

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※サインズ・オブ・セイフティ・アプローチ(SoSA)とは、どんな家族でも必ず安全性の側面を持っている事に注目し、援助者と家族がパートナーシップに基づいて、その安全性を強化出来る様、解決志向で相談援助技術を進める事を大事にしているものである。子ども家庭への援助活動・相談援助の方法の一つでもある。

援助を受ける事に対してインボランタリー(非自発的)な子どもや家族が、子ども虐待や少年非行の事例では多く出会う事になる。こうした時で、尚且つ、ワーカーとしては法制度に基づいて子どもや家族の意思に反する措置等を行わねばならない時、援助関係は信頼関係とは逆の敵対的な関係に拘泥されてしまう事がある。特に虐待を認めない保護者に対しては、SoSAが使用されている事が増えている。

社会福祉士養成講座編集委員会編(2011)『児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度』中央法規.

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6.まとめ・感想

3つの分野にまたがり活動をされている斎さんは、子どもの発達段階に応じて、現在と未来の支援を構築するための見立てをおこなうことのできるスペシャリストだと感じました。その背景には、子どもたちのそれぞれの発達段階に合わせた個別の支援に携わったことによるミクロな視点の積み重ねの先に「予防的支援」のためのマクロな視点が見出されたのだと思います。また、斎さんは複数の団体の中で組織マネジメントの分野でも活動されていることから、団体の「黒子」とご自身を表現していたことも印象的でした。



ソーシャルアクションが起き続ける組織であるためには、団体メンバーの個性や特性を理解し、自身の立ち位置を考えることが重要だと仰っていました。それには、斎さんが子どもたちに向き合っていたからこそ、組織内のメンバーの特性を理解したりチャレンジを支えることが出来るのかもしれないと個人的に思いました!



現状にはない予防的なサポートシステムを作るという点で、ソーシャルワーカーは「変人」であると仰っていました。当たり前に流れているものに対して違和感をもち、変化させることがソーシャルアクションであるという視点に大変共感しました。以上、レポートでした!

 

【文責】SCA1期生 立正大学臨床心理学部4年 武井裕典

NPO法人ダイバーシティ工房 個別指導員・事務局インターン生

 

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