「システム思考-アセスメントをアップデートする-」     【Social Change Agent 養成プログラム 2018 DAY2】

みなさん、こんにちは。day2のまとめ記事を担当します、SCA二期生の松本亨平です。

day2の講師は、人財・組織開発コンサルタントであり、バリュー・ファクター認定ファシリテーターでもある後藤拓也さんです。

(講師:後藤拓也さんプロフィール)

大学卒業後,広告会社で企業・NGO等のコミュニケーション活動に従事。退職後,サステナビリティと「システム思考」への関心が重なり,英国シューマッハ・カレッジ大学院に留学。「ホリスティック・サイエンス」修士コースを修了。帰国後,有限会社チェンジ・エージェントにて,営業,講師,ファシリテーターとして,「システム思考」や「学習する組織」の理論や方法論などをベースに人や組織の変容に携わる。2015年5月より独立し,現在,フリーランスの講師・ファシリテーターとして活動。「人の最高の可能性を探求する」をモットーに,企業,自治体,NPO,学校の先生などに向けて研修やワークショップの企画・開催を行う。

day2では、「アセスメントをアップデートする」をサブタイトルに、後藤さんから「システム思考」について学びました。

では、講義を振り返っていきましょう。

講義の導入部分では、「スピードキャッチ」というお互いを知り合うゲーム感覚のワークをしました。

自分の自己紹介をしながらボールを回して、徐々に早く回していくというワークだったのですが、どうやったら早く回せるかという事を全員で考える事で一体感が生まれ、体を動かし楽しみながら取り組むことができたので、とても盛り上がりました。

○なぜ、システム思考がソーシャルワークのアセスメントに役立つのか

システム思考とは,問題の原因を個人のみに帰属するのではなく,その出来事のパターンや,背景にある構造,心理的前提までをシステムとして捉え,分析することで,より深い変化を目指す考え方です。

システム思考は、主に人材開発や組織改革といった産業分野で発展し、用いられている考え方です。

ですから、ソーシャルワークに携わる方々にはあまり耳馴染みのない言葉ではないでしょうか。

そんなシステム思考ですが、

では、どの様にソーシャルワークのアセスメントに役立つのでしょうか。

それは、システム思考が、一つの問題やアクシデントを個人の問題として捉えるのではなく、その背景にある「構造」として捉える点に一つの主眼が置かれているからです。

困難を抱える人の問題を考えるときに、ついついその人の個人的な属性や状況、要因を考えてしまいがちですが、社会的な問題は決して一個人に依る要素のみではつくり出されません。

そこで、システム思考の様に、「個人」の背景にある「構造」を捉えるモデルは、問題の本質をつかみ取る上で非常に役立つのだそうです。

○システム思考の考え方=氷山モデルとは

システム思考では、問題を分析していくために氷山モデルという、理論モデルに沿って分析を進めていきます。

氷山モデルでは、「出来事」→「パターン」→「構造」→「メンタル・モデル」と物事を4つのレベルで理解し、より深い変化を目指していきます。

「出来事」とは、我々が日常で認識している「○○が起きている」「○○が問題だ!」という次元です。

「パターン」とは、長い時間軸で俯瞰すると度々出現する様な、繰り返されているパターンのことです。

「構造」は、そのパターンを生み出し続けている、組織構造や物理的構造、情報の流れなどの事です。

そして、「メンタル・モデル」は、信念や思い込み、価値観といった構造の背景にある心理的な前提です。

その場しのぎの対処や、対症療法的な解決策の繰り返しに溺れないためには、特に、氷山モデルの「構造」と「メンタル・モデル」の存在に気づき、適切な対応を行うことが大切だと、後藤さんはおっしゃっていました。

○構造とメンタル・モデルの理解を深める

講義では、「構造とメンタル・モデルの理解を深める」として、構造を考える際のコツ、メンタル・モデルへの向き合い方を教わりました。

《構造を考える際のコツ》

・物理的構造

・情報の流れ

・制度・ルール/インセンティブ・罰則

・文化・雰囲気

・目的・目標の共有/非共有

・アイデンティティ

物理的構造の例では、ある研究所でコーヒーマシンを部屋の中から、オープンスペースに移動したことでスタッフ同士のコミュニケーションの量が増えたというお話がありました。

情報の流れの例では、意思決定の前にどんな情報が入ってくるかで特定の行動を取りやすくなるというお話がありました。

この様に、構造は普段あまり意識することはないですが、個人の判断や行動に大きな影響を及ぼしている様です。

一方、メンタル・モデルは常識や先入観、思い込み、価値観、信念といったより深い次元で個人の判断や行動に影響を与えているものです。

メンタル・モデルとは時として、「良いソーシャルワーカーとは?」の様に、私たちの在り方を根本で支える大切な要素だったりします。

なので、メンタル・モデルは「合っている」「間違っている」というものではなく、その存在に気付くことが大切だと後藤さんはおっしゃっていました。

メンタル・モデルに気づかないとビジョンや目的にそぐわない様な、不合理や負の状況に知らず知らずの内に陥ってしまう恐れがある。しかし、個人や組織、集団としてどんなメンタル・モデルを持っているかに気付くことで、新たな選択肢を生み出すことができる、のだそうです。

○実践ワーク

講義ではこの後、実際に私たちが日々の仕事や生活で直面する問題や困りごとの中には、どの様な構造、メンタル・モデルが潜んでいるのか実際にワークを通して考えました。

構造の分析をしていくと、普段あまり意識していなかった要素がパターンを創り出していたことに気づかされました。

グループで話すことを通して、自分の抱えている困りごとにはどの様な構造があるのか、俯瞰的に眺める練習になりました。

一方、メンタル・モデルは個人の価値観や信念に根ざしており、非常にセンシティブな部分を含んでいます。

グループワークの中でも、構造の指摘とは違ってメンタル・モデルの指摘は一種の申し訳なさというか、指摘のし辛さを感じました。

非常にナイーブな物も含むメンタル・モデルの指摘について後藤さんは、「愛を持って踏み込む」ことが大切だとおっしゃっていました。

メンタル・モデルは困りごとの根幹を形成している場合もある一方で、個人や集団の重要な価値観になっている場合もあります。そこに対して、踏み込んでいくためには「愛を持って」接していくことが大切なのだそうです。

○アセスメントをアップデートしていく

今回、ご講義いただいた後藤さんの普段の活動分野は、人材・組織開発といったビジネス分野です。そして、システム思考もそんなビジネスの世界で発展してきた理論です。

しかし、問題をその個人の要素だけではなく、構造やその背景にまで広げて分析していくその考え方はソーシャルワークの分野においても役立つ考え方です。

システム思考の様に、社会福祉の分野に今までなかった知識やツールをソーシャルワークに生かしていくことで、より良い支援のための「アップデート」をしていくことができるのではないでしょうか。

システム思考、氷山モデルを使いこなして、アセスメントをアップデートしていきましょう。

以上、講義レポートでした!