緊急対談(CSW×MSW)「コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)の可能性~地域包括ケアシステム構築にむけて~(後編)」

 緊急対談(CSW×MSW)「コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)の可能性~地域包括ケアシステム構築にむけて~(後編)」
 

前編はこちらから。http://goo.gl/zyoYlH

 

横山:「貴重なお話をありがとうございます。それでは次に、この仕事に求められていること、そして、魅力、やりがいなどについて、お話いただけますか?」

 

 

田村:「そうですね。今の時代、地域包括支援センターの社会福祉士に求められる役割は多様化しています。
社会福祉士は、地域包括支援センターの窓口ですので、相談者との関係づくりがまず何よりも大切だと日々感じます。
そして、相談者のエンパワメントをいかに引き出せるかということをいつも大切にしています。地域における主人公は当然、そこに住んでいる方達です。わたしたちは、そこに住む人たちが、元々持ってらっしゃる生活者としての力を大切にしながら、そこをサポートするカタチで地域に入っていけるといいと思っています。」

 

横山:「なるほど」

 

田村:「他には、多職種、多機関との連携できる関係づくりができる能力も必須になってきていると感じます。CSW1人でどうにかなることの方が少ないのですから、様々な専門性をバックグラウンドに有する人たちが集い、知恵を出し合い、地域に住んでいる方々をエンパワメントしていければ、広い意味で、しなやかな地域をつくることに寄与できると思っています。ですから、制度・インフォーマルサービスの情報など広範囲な知識も当然もっておく必要がありますね。」

 

横山:「本当に守備範囲が広いですよね、地域って…。そんな地域でCSWとして働く魅力を教えて頂いてもよいですか?」

 

 
田村:「そうですね。地域包括支援センターで働く魅力…(黙る)

 

横山:「あ、黙っちゃいましたけど(笑)」

 

田村:「いや…、魅力があり過ぎて、ですね…」

 
横山:「あ、熱いですね…、相変わらず(笑)」

 

田村:「まずは、地域の最先端でケースワークとコミュニティーワークを同時に行えることでしょう。日々地域の方の相談等を受け、ケースワークを行いつつ、地域のネットワークや資源をつくるために走り回ったり、町内会やその他、地域で長く力をもち、地域のために尽くしてこられた方と協働しながら、地域づくりに関われることも、とってもやりがいのある仕事だなと思います。」

 
 
横山:「ケースワークを行う中で得た気づきを、すぐに地域づくりのコミュニティワークに活かしていけるわけですね」

 

田村:「そうですね…。文字にすると簡単なように聞こえますが、それがなかなか難しいのですよね。でもだからこそやりがいがあります。他にも、地域の特性やニーズに合わせた事業の展開等は、まさにコミュニティワークですから、色々な自らの発想をもとに、地域をどのようにしていきたいかという多くの人々のビジョンを共有することで、多職種とのつながりが広がることで様々な知識 が身に付き、人脈も増えます。本当に視野が広くなったと感じていますね」

 

 

横山:「地域でソーシャルワークを展開するって、本当に色々と大変なことの方が多いでしょうが、自由度もあって、楽しい部分も多そうですね」

 

田村:「横山さんは病院でしかソーシャルワーク経験がないですから、隣の芝は青くみえる、じゃないですけど、まあいうほど楽しいことばかりでもないのですけどね。」

 

横山;「そうですよね…。隣の芝はなんとやら…でして(笑)」

 

田村:「(笑)」

 

横山「最後に、本題でもあります。地域包括ケアシステムの構築に向けて、ということで田村さんのお考えをお話いただけますか?」

 

田村:「はい。なりよりもまずは、地域ケア会議の有効活用ですね。そのために、住民同士の顔の見える関係づくり(自助、共助)をすすめ、地域問題の共有、解決力の向上をサポートしてく必要があります。そして、ケアマネジャーさんたちの資質向上のためにサポートをしていくことも地域包括支援センターには求められています。ケアマネージャーさんたちは、今後も変わらぬ地域包括ケアシステムを支えるキープレーヤーですから、その資質の向上は急務です。」

 

横山:「そのための主任ケアマネージャーさんの設置、ということですものね」

 

田村:「ええ。加えて、医療、警察、商店、町内会、民生委員など高齢者を支えるネットワー クの構築もすすめていく必要があります。厚労省の試算ですと、2025年までに介護人材を100万人増やさねばならないと出ているのですが、それと並行してインフォーマルサービスの充実を図ることで、介護予防支援の促進に寄与できると考えています。一番いいのは、病気を未然に防ぎ、かつ要介護状態にならずに、健康寿命を長くする、ということですからね。これは日本経済の観点からみても非常に重要なことです。ボリュームゾーンである高齢者の人たちが要介護状態になれば、それを現役世代が支えていかねばならない以上、負担が増えるわけですから、出来る限り健康で、生活の質を高く保つ高齢者の方達が多く住んで生き生きと暮らすことのできる地域をどう作れるか、ということを、どこの自治体も考えていて、その上で地域包括支援センターに期待される役割というのは大きいと感じています」

 

 
横山:「今後、地域で活躍するCSWも、ソーシャルワーク領域での花形になっていきそうですね」

 

田村:「ええ、そうならざるを得ないと思います。ケースワークとコミュニティ開発を同時にできるポジショニングがとれる以上、能力は非常に高いものを求められますが、まさに花形プレーヤーになっていく、いや、なっていかざるを得ないと私自身考えています。
他にも、住民が自主的に介護予防に取り組めるような基盤づくり(体操教室、サロン)、介護予防プログラムの充実、認知症支援の促進、認知症サポーター養成、認知症徘徊者ネットワークの充実、介護者支援…、本当にやるべきことは山積ですよ…。ええ。」

 

 
横山:「いやはや、本当に多様な知識とソーシャルワーカーとしての知力・体力が求められますね。
では、そろそろ時間も迫ってきましたので、最後になりますが、CSWを志す人たちへ、一言メッセージをお願いします」

 

田村:「はい。そうですね。今回色々とお話をしましたが、基本は、いや、この仕事で一番大切なことは、”相談支援は対象者を理解することから始まる”ことを忘れないことです。どんなにソーシャルワーカーとして知識や技術を得ようとも、ここがなければ、そもそも他者の支援するとは言えません。まずは、目の前にいる人に真摯に向き合い、自身の持ち得るもの全てをしっかりと向けていく。その積み重ねで、自分もソーシャルワーカーとして成長できたと思っています。新人さんも中堅もベテランも、年数に限らず、”クライエントからはじめる”ことを忘れてはいけないと思っています。

本当に、ソーシャルワーカーという仕事は奥深く、人の多様な価値に触れ、自身も揺り動かされたりしながら、自身のソーシャルワーカーとしての価値を形作っていくのだと思います。ぜひ、一人でも多くの学生さんや、この仕事に興味を持つ方が、この業界に入られ、一緒にソーシャルワーカーとしてクライエントの方を支え、一緒に素晴らしい仕事ができればいいなと思っています。ぜひ、現場でお待ちしています!!

 

横山:「田村さん、本日は長い時間、素晴らしいお話を聞かせていただき、本当にどうもありがとうございました。私自身も日々現場で地域包括支援センターの方と一緒にお仕事をしていますが、今回改めて、このような機会にお話を聞くことができて勉強になりました。本日は本当にどうもありがとうございました。」

 

 
田村:「どうもありがとうございました」

 

 
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<インタビュアー横山より>
 
田村さんは、私がひとつめに勤務していた病院でお世話になっていた地域包括支援センターの社会福祉士さんです。
コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)として働く魅力として田村さんがおっしゃっていた「地域の最先端でケースワークとコミュニティーワークを同時に行える」という言葉が、まさに、今後どの領域のソーシャルワーカーにもより一層求められる役割なのだろうと想像しながらお話を伺っていました。
 
所属する機関が対象とするクライエントの方へのケースワークに加え、「所属する機関が地域において求められている役割」を常に考え、ポジショニングし、地域に対して必要なアウトリーチを行っていく、というプロセスは、今後どういった種別や役割の機関に属するソーシャルワーカーたちにも求められていくのだろうと思いました。

 

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