「スキルパート2 コミュニティオーガ二ゼーション-仲間を巻き込む-」                           【Social Change Agent 養成プログラム 2018 DAY5】

こんにちは! SCA選抜2期生の藤田琴子です。DAY5の内容をシェアさせていただきます。

DAY5のテーマは

『コミュニティオーガニゼーション~仲間を巻き込む~』でした!

「コミュニティオーガナイジング」について、「コミュニティオーガナイジングジャパン(COJ)」さんが講義とワークショップを行ってくださいました。

●コミュニティオーガナイジングとは

みなさんは「コミュニティオーガナイジング(以下CO)」をご存知ですか?

COとは、“市民の力で自分たちの社会を変えていく”ための方法です。歴史上でも、キング牧師の公民権運動やガンジーの独立運動など、社会的弱者とよばれる立場の人たちの声を社会に届け、変革につなげていく実践が数多く生まれています。市民が草の根から立ち上がり、コミュニティとして思いを共有し、周りを巻き込みながら社会を変えていくCO。

その様子は児童書の名著「スイミー」に例えられます。大きな魚に立ち向かうために、小さな魚たちは集まって大きな魚をつくりあげます。そしてそのみんなでつくった大きな魚の大切な「目」を担うのは、みんなと色の違う1匹の魚。この「小さい力の結集」と「違いの尊重」は、まさにCOのエッセンスだといえるでしょう。

私たちソーシャルワーカーも、社会福祉士倫理綱領のソーシャルインクルージョンという“社会に対する倫理責任”をもつ者として、その実践の大きなヒントをCOからいただける気がしました。

●コミュニティオーガナイジングのリーダーシップ

COのリーダー像はカリスマ性のあるものではないようです。“人は誰でもリーダーである”という考えをもち、「人々が目的を達成できるように責任を引き受けるリーダーシップ」を大切にしています。先行きの見えない困難で不確かな状況下でも、人々が共有した目的を達成すること、そして当事者の力を引き出すことがリーダーの役割であり、そのためのスキルが体系化されています。

●リーダーシップの5つの要素

COのリーダーシップについて体系化したのは、マーシャル・ガンツ博士です。彼はアメリカで公民権運動や労働者組合などに関わり、草の根キャンペーンを実践してきました。そのなかで彼は、目標に向かって仲間の力を高めていくことを徹底していきました。そのガンツ博士が提唱した5つの要素がこちらです。

①ストーリーを語る

 人の行動を促すためには心を動かすストーリーが必要。

②関係をつくる

 目的意識を一対一の関係で共有していくことで、関係に基づいたコミットメントがうまれ、継続的な活動になっていく。

③チームをつくる

 多様性のあるメンバーが共通目的のもとで力を相互補完しながら明確な組織構造をつくっていく。

④戦略をつくる

 課題の現状やそれを取り巻く社会構造、自分たちのもつリソースなどをアセスメントした上で、創造的な戦略をつくる。

⑤アクションする

 社会を変革するモチベーションを高め、周りを巻き込める目標のある行動を設定していく。

●ストーリーテリング

今回のプログラムでは、上記の5つの要素のうち、「1ストーリーを語る」をコーチングしていただきました。

COの中でもベースとなる「ストーリー・オブ・セルフ」。COがこれを基礎として置くのは、“行動は認識的理解だけではうまれない”という前提があるからです。

頭で考える〈How〉(戦略・分析)

      +

心で感じる〈Why〉(ストーリー・動機)

      =

〈Action〉(行動)

行動を起こしていくためには、認識的理解と同時に「感情的理解」が必要だということです。

それは「感情」を経験できなければ「選択」するための価値観をもつことはできないからだといいます。

ここで参考になるのが「ハーバードLGBT敵視のいじめに関する集会でのジェームス・クロフトのスピーチ」です。

行動に巻き込んでいくために必要な3つのエッセンスがつまったスピーチです。

そのエッセンスとは、

①Story of SELF

 自身のストーリーを語って聞き手の共感を呼ぶこと

②Story of US

 聞き手と自分自身が共有する価値観や経験といった“私たち”のストーリーを語り、コミュニティとしての一体感を創り出すこと

③Story of NOW

 いま行動を起こすことについてのストーリーを語ることで、共に行動する仲間を増やすこと

自分の経験、それが「私たち」の事柄であると他者を巻き込み当事者意識を生む言葉、そしてそれが「今」行動を起こすことを必要としているのだというモチベーションを促す呼びかけ。

紹介したクロフト氏のスピーチでは、この3つのエッセンスが組み合わされながらストーリーが語られています。

●ストーリー・オブ・セルフ

今回は、1ストーリー・オブ・セルフを、3・4人のチームになって練習していきました。

まずはそれぞれが、自分の人生における重要な経験(困難)を振り返り、どのような「困難(チャレンジ)」だったのか、そのとき何を「選択」し、それによってどのような「結果」がうまれ、自分が何を学んだのかをワークシートに書き出していきます。

ここで重要なのは場面描写。聞く人がその場に自分もいる感覚になるような具体的な描写をすることで、“共感”がうまれていきます。つくりたいコミュニティの目的だけでなく、ストーリーを語ることで人柄が伝わることが大事だといいます。

ワークシートに書き出したのち、チームのメンバーに自分のストーリーを語り、聴く側はその語りからみえた発話者のもつ「価値観」をフィードバックしていきます。このフィードバックによって、一人ではみえない“気づき”が与えられ、自分が行動を起こすに至った根拠がさらに明確になり、エンパワーメントされていきました。「ストーリー・オブ・セルフが、課題解決のパワー源になる」という言葉の意味を体感することができたワークショップでした。

●DAY5を振り返って

ソーシャルアクションを起こそうと考えるとき、「他者をどう巻き込むか」という課題は必ずあると思います。草の根から立ち上がった歴史上の様々なアクションを振り返れば、そこには強い意志を裏付けるストーリーがあり、そしてそのストーリーに共感し励まされ突き動かされた人々がいたことに、改めて気づかされました。ワークでは、他の参加者のストーリーを聴きながら、具体的な場面描写とともに語られることで増幅する感動を体感することができました。今回の講義とワークショップで得た、他者と共感しながら目的に向かっていくためのスキルを、大きなスイミーをつくってよりよい社会を築いていくために活用していきたいと思います!